天皇誕生日

髪を切るためだけにわざわざ自由ヶ丘まで出向く。先輩から半額券をいただいたので5000円が2500円になる。

生まれて初めて入る「美容室」はえもいわれぬ雰囲気を醸し出していた。駅ビルの1500円カットとは何かが激しく違っていた。「どこか痒いところはありませんか？」との問いに「歯痒いです。」というボケを用意していた自分を少しだけ呪った。それは美容室というより病室での会話のような気がする。

やけに陽気な染色体XYが「今日はどうなされますか？」と訊いてきた。まさか「髪を切ってください。」と答えるわけにもいかないので、「ショートで。あと、梳いてください。」と言っておいた。第2外国語の仏語よりたどたどしい発声だった。

散髪とシャンプーとドライヤーとワックスとセットとマッサージが終わった。鏡の前には奇妙奇天烈な髪型となった俺がいた。俺はどう頑張ってもショートが似合わないんだなぁ、と嘆いた。来年の初詣の願いは「早く髪が伸びますように。」に決定。

散髪〜マッサージまでの時間より待ち時間のほうが長いというミラクルに耐えつつ、金を払って店を出た。見も心も財布も軽くなった。

やけにわかりにくい場所に蔦屋があったので、CDを12枚ほど借りて自由ヶ丘を後にした。腕に感じるCD12枚分の重さが心地良かった。